貞之助は、井谷と雪子とが別々に出て五時半に事務所で落ち合う手筈であると聞いて、それで差支えないけれども、井谷は時間通りキッチリ来るに違いないから、雪子ちゃんもそれに遅れないように、―――井谷より二三十分早く着くくらいに来て欲しい、と、固く云って置いたのであったが、五時十五分過ぎになってもまだ見えそうな様子がないので、気が気でなかった。
妻や雪子が時間を守らないのは毎度のことであるから、自分は馴れっこになっているけれども、急勝な井谷を待たすことになっては此方も苛々させられるのが叶わないので、もう出たこととは思うものの、念のために蘆屋へ電話を申込んだが、それが懸らないうちに事務室のドーアが開いて、井谷のあとから雪子も同時に這入って来た。
「やあ、一緒になってちょうどよかった。