貞之助は今日の会合のいきさつに就いて、妻から一と通りは聞かされていたけれども、さっきは電話のことであったし、それに丹生夫人と云う人も、名前は知っているけれども実際には会ったことがあったかなかったかハッキリせず、何となく五里霧中で引っ張り出された形であった。
で、今日の相手がどう云う人で、井谷とどう云う関係にあるのか、途々車の中で聞いて見ると、わたくしもよくは存じませんから委しいことは丹生さんにお聞きになって下さいまし、と云うのであったが、では丹生夫人とあなたとはどう云う御関係ですかと問うと、あの奥さんとは極く最近のお附合いなんでして、今日お目に懸りますのが二度目なんでございますの、と云う答に、いよいよ狐につままれたような工合であった。
そしてその料理屋、―――「吉兆」と云う家へ行って見ると、もうその夫人と橋寺と云う人とが先着しているのであったが、井谷は座敷へ通りながら、