多分橋寺も、貞之助たちが強引に引っ張り出されたのと同じようにして引っ張り出されたのであろう。
彼自身では今急に再婚すると云う決心がついた訳ではなく、突然丹生夫人に、―――而も格別昵懇でもない夫人に、―――掴まって、考慮の時間も与えられずに臀を叩かれて出て来たものであるらしく、頻りに「困りましたなあ」とか「驚いたなあ」とか云っているのであるが、その当惑のしかたに愛嬌があって、此方に不快を感じさせるような所はなかった。
貞之助は暫く話しているうちに、この男がなかなか社交的に訓練された円みのある人物であることが分った。