貞之助は暫く話しているうちに、この男がなかなか社交的に訓練された円みのある人物であることが分った。
出された名刺を見ると、医学博士の肩書があって東亜製薬の専務取締役とあり、自分でも「医者はいたしておりません、薬屋の番頭をやっております」と云っているだけに、いかさま当りの柔かな、応対の如才ない実業家タイプで、医者らしいところは余り見えない。
年齢は四十五六と聞いたが、顔から手頸、指の先に至るまでむっちりと脂肪分の行き亘った色白な皮膚で、目鼻立ちの整った豊頬の好男子であるけれども、肥えているために軽薄には見えず、年相応に貫禄のついた紳士で、先ず今日迄の見合いで出遇った候補者の中では、この男の風采が一等であるかも知れない。