貞之助は、自分たちの置かれた立ち場を随分妙なものであると感じたが、そんなことよりも、この光景を格別当惑した風もなく笑って眺めていられるような度胸を、いつか雪子が身に着けているのが、不思議であった。
それは勿論、悪びれたところを見せるよりは落ち着いてニコニコしていてくれる方が、この場の収まりはよいに極まっているけれども、恐らく昔の雪子であったら、こんな場合にいたたまれないで、真っ赧になるか涙ぐむかして、或は座を立ってしまうであろう。
いくつになっても初心娘の純真さを失わない彼女であった筈だけれども、たびたび見合いの場数を蹈むうちに、矢張一種の厚かましさ、心臓の強さ、と云ったようなものが出来てしまったのであろうか。