貞之助は客が来る前に帰宅して、実はあれから僕の方へも電話があった、橋寺氏は家庭の空気と云うものに飢えているらしいから、今日はお宅の皆さんで会うて上げて下さいと云うことやったが、しかし雪子ちゃんが、家で会うことをよう承知したなあ、と云い、僕は何よりも雪子ちゃんのそう云う心境の変化が嬉しい、などと云ったりしていたが、間もなく三人が到着して、応接間の客になった。
井谷は自分だけ廊下へ出て来て幸子を呼び、今日はこいさんはいらっしゃいませんの?
と聞くので、幸子はぎくっとしながら、生憎妙子は出かけておりまして、と云うと、では悦子お嬢さんだけでもお出になって下さい、橋寺さんのお嬢さんもお連れして来たかったんですが、今日は急なことでしたので、この次にはきっとお連れしますわ、ちょうど悦子お嬢さんとお友達におなりになれますわ、と云ったりして、お嬢さん同士が先ず仲好しになってくれるのが一番よい、そうしたら橋寺も一層心が動くであろうし、必ず巧く行くと思う、と云うのであった。