夕飯の席では雪子も悦子も遠慮させて、専ら三人で話したが、今日橋寺と初対面をした幸子も、矢張彼から好い印象を受けたものと見え、夫婦は期せずして彼の人柄を褒め、雪子の意見はまだ聞いて見ないけれどもあの人ならば恐らく厭ではないのであろう、何となくそうらしいところが見える、と云う点まで観察が一致した。
そして、丹生夫人から収入やら家柄や性格などのことにつきその後の問合せの結果を聞かされるにつけても、出来ればこの縁談を物にしたいと云う気持が強まるばかりなのであったが、何分にも夫婦の眼には橋寺の方に大して熱がありそうにも見えないのが、心もとなかった。
が、丹生夫人に云わせると、彼女たちが余り端からやいやい云うものだから、照れ隠しにああ云う様子をするのだけれども、お腹の中は大いに色気があるのである、ただ正直のことを云えば、亡くなった細君は恋女房だったので、今でもまだ多少仏への手前があり、その人の遺れ形見であるところの娘の思わく、と云うようなことにも気がねがあるらしい、それで再婚するにしても、なるべく受動的に、人にすすめられて余儀なくそうする、と云う形を取りたいのでもあろうし、又実際に、自分では蹈ん切りが付かないので誰かに後から突き落して貰いたいのでもあろう、ほんとうに気がないものならいくら何でも二度も引っ張り出されて来る訳がないし、今日にしても、たった一遍会ったばかりのお嬢さんの家へ押しかけるなんて非常識な、と口では云いながら結局出かけて来てしまったのは、雪子さんに気がある証拠ではなかろうか、と云うのであって、成る程そう聞けばそうも思えないことはなかった。