十六
その翌日丹生夫人から幸子に電話があり、昨日御主人が橋寺さんをお訪ねになったそうであるが、そう云う風に直接の交際が始まったのは結構である、何卒その呼吸で大いに親交を結んで貰いたい、従来あなた方は万事を兎角人任せにしていたのが宜しくない、それだからお高く留まっているの何のと云われる、此処まで私たちが橋渡しをした以上、あとはあなた方の熱意と努力次第である、もう私達の役目は済んだのであるから、井谷さんも私も当分引込んでいることにしよう、大丈夫きっと巧く行くと思うから、しっかりやって御覧になるがよい、そして一日も早く好い結果を知らして貰いたい、と云って、おめでとう、とまで云ってくれたが、幸子夫婦の観測ではまだなかなか祝って貰えるところまで進行してはいなかった。
と、ちょうどそのあとで、往診のついでにお宅の前を通りかかったからと云って櫛田医師が立ち寄り、この間御依頼を受けた人のことが分りました、と云うのであった。