そして、一度は文句が強過ぎるような気がして書き直し、二度目には弱過ぎるような気がして又書き直し、漸く三度目に書いたものを投函したが、出してしまうと、出さない方がよかったのではないかと、直ぐ後悔する気になった。
もし先方に結婚の意志がないものなら、今更あの手紙に依って飜意するとも思われないし、又その意志があったとしたら、あんな手紙を貰ったために却って厭気がささないとも限らない、矢張自然の成行きに任して置くのが一番賢明であったかも知れない。
貞之助は、別にその手紙に返事を期待した訳ではなかったが、それでもその後二日たち三日たちして、先方から何の音沙汰もないと、じっとしていられないようになり、次の日曜日の朝、わざと幸子には目的を告げず、ちょっと散歩にと云って、家を出た。