借家だということは聞いていたが、そんなに貧弱な構えではなく、ちょっと妾宅と云った風の、見越しの松に板塀の小ざっぱりした造りの二階家が三四軒並んでいるうちの一軒で、細君を亡くした中年の紳士が娘と二人で暮らすのにはこれでも広過ぎるくらいであろう。
貞之助は暫く門前に彳んで、折柄の朝日に葉が一つ一つキラキラと光る松の葉越しに、硝子障子が半分ばかり開いている二階の欄干を見上げていたが、折角此処迄来たのにと思うと又気が変り、ふらふらと門内へ這入って行って玄関のベルを押してしまった。
取次に出た五十恰好のばあやが間もなく二階へ案内したが、階段の途中まで上りかけた時、