その日、帰宅した夫から上々の首尾であったことを聞かされた幸子は、あなたもえらい心臓になりなさったと冷やかしながら、内心大いに喜んだことであったが、昔であったらなかなか喜ぶどころではなく、何ぼ何でも不見識なと、怒らずにはいなかったろうし、夫にしてもまさかそれ程厚かましくは振舞わなかったに違いないので、雪子の縁談のことについては我ながら変節したことに驚かれるのであった。
で、これ以上働きかけるのは止めにして、次の日曜を待つことにしたが、その間に一遍丹生夫人から電話があった。
その後御主人が令嬢ともお会い下さったそうで、だんだん有望になって行くのは慶賀に堪えない、又今度の日曜には橋寺氏父子を御招待になったそうであるが、どうか皆さんで十分に款待して上げて下さい、分けて雪子さんは、最初に与えた「陰気」と云う印象を拭うように努めて戴きたく、これが一番心配であるから特に申し添えて置く、と云うのであったが、これで見ると、橋寺はその後の進展の模様を一々夫人に報告しているのであって、彼の方でも決してこの問題に冷淡ではないらしいのであった。