歯切れのよい東京弁の人なのが、興奮しているので一層テキパキした口調になって、何だか知れないが橋寺さんがひどく怒っている、僕はあんな因循姑息なお嬢さんは嫌いです、あなた方はあの人を花やかだなんて云われるけれども、何処に花やかなところがあるんです、僕はこの縁談はキッパリお断りしますから今直ぐ先方へその旨をお伝え下さいと云っている、何でそんなに怒っているのかよく分らないけれども、二人きりでゆっくり話し合って見ようと思って、今日の夕方から一緒に散歩に行くように誘って見た、すると最初に女中が出たので、雪子さんがいらしったら出て下さいと云うと、いますと云って引っこんだきり、どう云う訳かなかなか雪子さんが出て来ない、散々待たして漸う出たには出たけれども、御都合は如何ですと云っても、はいあのう、はいあのうを繰り返すばかりで、イエスだかノーだかさっぱり分らない、問い詰めると聴き取れないような細い声で、ちょっと差支えがございますので、………と、やっとそれだけ云って、あとは一と言も云わない、僕も癪に触ったからそれきりプツリ切ってしまった、橋寺さんはそう云って、いったいあのお嬢さんは人を何と思ってるんです、余り馬鹿にしてるじゃありませんかと、かんかんになっている。
―――丹生夫人はここまで一気にしゃべって来て、
「そう云う訳ですから、残念ですけれどこの話は駄目になったと思って頂戴」