云ったところで仕様のないことだし、言えば尚更雪子に対する夫の感情を悪くする恐れがあったからであるが、貞之助は貞之助で、妻には云わずに、自分の一存でその後橋寺に手紙を書いた。
―――事態が既にこうなってから何を申上げることもないし、未練がましいようだけれども、小生として一言貴下に釈明させて戴かなければ立つ瀬がない。
貴下は或は、小生等夫婦が妹の心中を十分確かめても見ずにこの縁談を進めたようにお考えかも知れないが、事実は、あの妹は決して貴下を嫌っていなかったのみならず、寧ろその反対であったと信じる。