三十を越した女がそんな馬鹿らしいことが、と、他人は誰しもそう思うところだけれども、彼女の平生をよく知っている肉身の者たちには不思議でも何でもなく、ああ云う場合に彼女としてああ云う風になるのが常で、あれでも昔よりは幾分か人みしりをしなくなったのである。
が、こんなことを云っても世間に通る筈がないので、何の言訳にもならないことは小生等も存じており、殊に先日の電話の件については、何とお詑びを申上げてよいやら言葉もない。
小生は彼女の性質を陰気にあらずとし、却って内部に花やかさを蔵しているとさえ申上げたことがあり、今でもその言が誤りでないことを信じる者であるが、しかし女があの歳になって満足な挨拶一つ出来ないと云うことは、何としてもふつつかの至りで、貴下が御立腹になるのも御尤も千万であり、この一点を以てしても自分の妻とするに足らざる者とお断じになったとすれば、寔に已むを得ないことである。