貴下の御家庭の和気藹々たる情景は、世にも羨しい限りであって、ああ云う御家庭なればこそ御令妹の珠のような性格が完成されたのであろうと存ずる云々。
―――と、貞之助と同じく巻紙に毛筆で、「候文」ではないけれどもよく行き届いたソツのない書き方がしてあった。
尚又、幸子はあの日、神戸を散歩した折に橋寺の娘を連れて元町の洋品店へ這入り、彼女のためにブラウスを見立ててイニシャルを入れるように注文して置いたところ、破談になった数日後にその刺繍が出来たので、贈らないのも却って変であると考え、井谷を通じて先方へ届けるようにして貰った。