中姉夫婦の親切は分っているけれども、自分の性分としてあれ以上勤めることは出来ないのであるから、それで纏まらなかった縁なら惜しくはない、―――と、多少は負け惜しみもあって虚勢を張っているのかも知れないが、―――いかにもそう思っているかのように振舞っていた。
幸子はとうとう雪子に向って露骨に不満を爆発させる機会を失い、ついぐずぐずに仲直りをしてしまったものの、まだ何か胸に燻っているものがあって釈然とはしなかったので、妙子が来たら一遍聞いて貰おうと心待ちにしていたのであったが、生憎とこのところ二十日間ばかり、―――ちょうど三月上旬の火曜日、あの「運命の電話」があった翌日の朝早くちょっと立ち寄って、「今度も亦あかなんだ」と云う一と言を聞くとひどくガッカリした様子で帰って行ったきり、ふっつり姿を見せないのであった。
ありていに云うと、幸子はこの間から丹生夫人や井谷から妙子のことを問われる度に、この人達は事情を知りつつ空惚けて探りを入れているのではないかと云う警戒心から、いつも当らず触らずの答をしていたのであったが、それと云うのは、妙子が別居していることはなるべく知られたくないけれども、万一奥畑との関係が問題化した場合には、あの妹は縁を切ってありますと、世間に向って云えるだけの用意をして置きたかったからなのであった。