ありていに云うと、幸子はこの間から丹生夫人や井谷から妙子のことを問われる度に、この人達は事情を知りつつ空惚けて探りを入れているのではないかと云う警戒心から、いつも当らず触らずの答をしていたのであったが、それと云うのは、妙子が別居していることはなるべく知られたくないけれども、万一奥畑との関係が問題化した場合には、あの妹は縁を切ってありますと、世間に向って云えるだけの用意をして置きたかったからなのであった。
が、そう云ういろいろの心づかいも水の泡に帰してしまった今、彼女は急に妙子の顔が見たくなったので、こいさんどないかしたのやろうか、電話かけて見ようかと、或る朝食堂で語り合っていた折のことであった、悦子を学校へ送って行ったお春が、なかなか帰って来ず、三時間もたって戻って、食堂をそっと覗いて見、幸子と雪子だけしかいないのを確かめると、そのまま這入って二人の傍へ忍びやかに寄って来て、
「こいさんが御病気でございます」