―――実は今朝早く「お春どんに電話」と云って起されたので出て見ると、奥畑の声で、こいさんが、一昨日僕の家に来ていて急に発病した、それが夜の十時頃であったし、熱が四十度近くもあり、悪寒戦慄を伴ってもいたので、アパートへ帰って臥ると云ったのを引き留めて、僕の家で臥かせた、ところが容態がますます悪く、昨日近所の医師を呼んで診て貰ったら、最初の時はよく分らず、流感か、事に依るとチブスではないかと云っていたが、昨夜の夜中から激しい下痢が始まり、腹が絞り出したので、大腸カタルか赤痢であろうと云うことになった、もし赤痢と決定すれば何処かの病院へ入れなければなるまいが、何にしても看護の手が必要であるからアパートへ帰す訳に行かず、目下僕の家に置いて手当てしているので、このことを内々でお春どんに迄知らせて置く、当人は苦しがっているけれども今のところ別に心配なことはないから、引き続き僕の所で治療を加えても差支えない、急変があればお知らせするが、万々そんなことはあるまいと思う、と云うことだったので、お春は兎も角も自分が様子を見て来た上でと考え、今朝悦子を学校へ送った帰りに西宮へ廻ったのであった。
ところが、行って見ると電話で想像したよりも大分悪い。
昨夜からもう二三十回も下痢したそうであるが、余り頻繁なので、起きて、椅子に掴まって、御虎子の上へ跨がったきりであった。