幸子には、あれで案外気の弱いところのある妙子が、中姉ちゃんに黙っててほしいなどと口の先ではえらがりを云っても、本当の気持はその反対であることがよく分るので、こう云う時にはきっと家庭の有難みを身に沁みて想い出しているであろうし、自分や雪子が側にいてくれないことをどんなにか心細く感じているであろうと察した。
十九
お春はやがて仕度をして、早お昼を済ますとそこそこに、では二三日帰らして戴きます、と云って出かけたが、出がけに応接間へ呼び入れられて、くれぐれも平素の物臭な癖を出さないように、病人の体に触れたあとでは消毒を怠ってはならないこと、病人が排便した時はそのつど便器にリゾールを滴らすこと、等々の注意をこまごまと与えられた。