幸子は奥畑と雪子とが交〻語るのを聞き終ると、取り敢えず二階へ上らして貰った。
病室は南向きの六畳の間で、外にちょっとした露台のようなものが附いてい、出入り口がドーアになっており、畳敷きではあるけれども、床の間はなく、天井までも白壁になっていて、一方に押入があるのを除けば、大体洋間の感じである。
飾り付けと云っては一隅の三角棚に、西洋の骨董品らしい、きたならしく蝋涙のこびり着いた燭台と、その他二三の蚤市からでも買って来たらしいガラクタと、もう余程前の旧作らしい色の褪めた妙子の仏蘭西人形などが載せてあり、壁に小出楢重の小さな硝子絵が一枚懸けてあるだけで、本来は殺風景な部屋に違いないのであるが、病人の着せられている臙脂色に白い粗い市松模様を置いた、クレプ・ド・シンの嵩高な羽根布団が思いきり派手なのと、露台への出口が一間の引き違いの硝子戸になっていて、そこから射し込む日光がその布団の上一杯に照っているのが、ぱっと花が咲いたような明るさを齎しているのであった。