と云うのは、長い間風呂に入らないので、全身が垢じみて汚れているのは当然だとして、それとは別に、病人の体には或る種の不潔な感じがあった。
まあ云って見れば、日頃の不品行な行為の結果が、平素は巧みな化粧法で隠されているのだけれども、こう云う時に肉体の衰えに乗じて、一種の暗い、淫猥とも云えば云えるような陰翳になって顔や襟頸や手頸などを隈取っているのであった。
幸子はそれをそうはっきりと感じたのではないが、でもぐったりと寝床の上に腕を投げ出している病人は、病苦のための窶ればかりではなしに、数年来の無軌道な生活に疲れ切ったと云う恰好で、行路病者の如く倒れているのであった。