たとえば雪子は、妙子が入浴した後では決して風呂に入らなかったし、幸子の肌に触れた物なら下着類なども平気で借りて着る癖に、妙子の物は借りようとしなかった。
妙子はこのことを感づいていたかどうか知らないが、幸子はそれをうすうす感づいていたばかりでなく、雪子がそんな風になったのは、奥畑が慢性の淋疾に罹っていると云う話を、ふっと耳にした時以来であるらしいことにも、心づいていたのであった。
ありていに云うと、幸子は妙子が口癖のように板倉や奥畑との肉体的関係を否定して「清い交際」をしているだけだと云っていたのを、そのまま信じていたのでもないけれども、努めて深くその疑問を突き止めないようにして来たのであったが、雪子はじっと黙っていながら、余程前から妙子に対して無言の批難と軽蔑とを示していたのであった。