「こいさん、何も心配することはないねんで。
けど斎藤先生が、大事を取るに越したことはないさかい、念のために誰かもう一人相談相手になる先生を呼んでほしい云うてはるよって、櫛田さんに来て貰おう思うてるねん」
幸子が突然そう云い出したのは、蔭で三人がこそこそ相談し合ったりして、まだ重態であることを自覚していないらしい病人の神経を刺戟するより、こう云う風に直接打つかってしまった方がよいであろうこと、阪大の偉い先生の来診を仰いだらと云う斎藤医師の提議もさることながら、それも下手をすれば病人に気を廻させる恐れがあるので、先ず櫛田医師を招いて、その意見を徴してからでも遅くはないであろうこと、等を慮ったからであった。