と、そんな風に語り出した。
そして云うのには、昨夜の夜中、二時頃であったと思う、自分が病室の廊下を隔てた反対側の部屋に看護婦と二人で寝ていると、(夜は大概自分か看護婦かが交代で病室に詰めるのだけれども、昨夜は病人の容態が最初いくらか良さそうに見え、十二時頃から安眠したようだったので、今夜は僕が代りましょう、あなた方は一遍ゆっくりお休みなさいと啓坊が云うのに任せて、二人は隣室に寝、病室には啓坊が、病人の枕元でごろ寝していたらしかった)うーん、うーん、と云う声が聞えて来たので、病人が苦しみ出したのか、それとも魘されてでもいるのか、啓坊が附いている筈だのに、と思いながら、急いで起きて、病室のドーアを半分ばかり開けかけた時であった、「こいさん、こいさん」と、頻りに呼び起している啓坊の声に交って、こいさんが一と声、「米やん!
と、呼ぶのが聞えた。