奥畑は病人の言葉にひどくイライラして、こいさん、そない云わんと僕所にいなさい、何もそんなに気イ使うことないやないか、と、頻りに思い直させようとするのであったが、病人はそれが全く聞えないような顔をして、雪子にばかり物を云うので、とうとう奥畑は青筋を立て、何でこいさん僕所が嫌になったん、と、ちょっと声の調子を上げた。
雪子はその場の様子から、昨夜の妙子の譫語が原因で二人の間に感情の縺れがあるらしいことを察したが、それには触れずに、病人に食って懸ろうとする奥畑を宥め、御好意は寔に有難いけれども、自分たちとしてもそう長い間病気の妹をお預けして置く訳にも行きかねるし、蘆屋の姉もこう云って来たので、と、蒲原病院へ入院させる手筈が整ったことを話して、纔かに奥畑を得心させたのであった。
二十一