それと云うのが、昨日と今日とでは病人の様子がひどく変っていることを発見したからで、ありていに云うと、昨日までは斎藤医師にあんな風なことを云われても、話半分に聞いて、まさか最悪の場合なんてことがある訳はない、あれは医者の嚇かしに過ぎないと、高をくくってもいられたのであったが、今朝の工合では、これはひょっとすると………と、云う風に思えて来たのであった。
幸子が第一に気が付いたことは、昨日と違って今朝は病人の眼が据わっていた。
平素から表情の顕著な人ではないが、今朝は全く感覚を失ったような茫然たる顔つきになって、異様に大きく見開かれた瞳が、じっと空間の一点に釘付けになっていた。