平素から表情の顕著な人ではないが、今朝は全く感覚を失ったような茫然たる顔つきになって、異様に大きく見開かれた瞳が、じっと空間の一点に釘付けになっていた。
それはどうしても死期が近づいた相のように思えて、見ていると恐くなって来るのであったが、昨日はまだあんな風に涙を浮かべて物を云ったりする元気があったのに、今日はさっきも奥畑と姉達が、附いて行く、いや止めてくれ、………で、外の廊下で揉み合っている間じゅう、当人は何も関わりがないかのように空ろな眼を据えているばかりであった。
昨日の電話で、蒲原院長は特別室を用意して置くと云うことであったが、妙子が入れられた部屋と云うのは、病院とは廊下で繋がって別棟になっている、金のかかった純日本建築の座敷であった。