が、櫛田医師の診察の結果は、斎藤医師とは大分違っていて、僕には肝臓が脹れているようには思われない、従って肝臓膿瘍などと云うことは考えられない、熱の差し退きや悪寒戦慄を伴ったりするのは、悪質の赤痢には有り得ることで、異常と云う程のことではなく、大体に於いて順潮の経過を辿りつつあるものと考えられる、と、そう云うので、ただ何分にも衰弱がひどいからと、その場でリンゲルとヴィタカムフルの注射をし、後刻プロントジールの注射もするように「水戸ちゃん」に命じた。
そして、では又明日伺います、そう御心配なさることもないでしょうと、事もなげに云うのであったが、幸子は矢張安心がなりかねて、玄関まで送って出ながら、先生、ほんとうに大丈夫でっしゃろかと、涙の溜った眼を向けると、大丈夫です大丈夫ですと、いかにも確信ありげなのであった。
誰か、阪大の先生あたりに診て戴かないでも、………と、云うと、さあ、斎藤君はあんなことを云うけれども、あれは少し大事を取り過ぎますな、もしその必要があるようになれば云いますが、今のところ僕に任して置いてくれても大丈夫ですよ。