そして、では又明日伺います、そう御心配なさることもないでしょうと、事もなげに云うのであったが、幸子は矢張安心がなりかねて、玄関まで送って出ながら、先生、ほんとうに大丈夫でっしゃろかと、涙の溜った眼を向けると、大丈夫です大丈夫ですと、いかにも確信ありげなのであった。
誰か、阪大の先生あたりに診て戴かないでも、………と、云うと、さあ、斎藤君はあんなことを云うけれども、あれは少し大事を取り過ぎますな、もしその必要があるようになれば云いますが、今のところ僕に任して置いてくれても大丈夫ですよ。
………けど、素人眼でも、昨日まではあんなではあれしませなんだのに、今日は何や人相まで変ってしもうてて、………あの顔つきは死期が近づいた人みたいに見えるやありませんか、と云うと、それは思い過しですよ、衰弱すれば誰でも一時あんな風になりますよ、と、櫛田医師はてんでそんなことは問題にしないのであった。