でもこいさんは案じたように啓坊と同棲することはせず、本山村の甲麓荘と云うアパートで独身生活をすることになったことも、あの時お知らせした筈ですが、その後どんな風にして暮しているのやら、気にかかりながらつい此方から尋ねても見ず、先方からも何のたよりもありませんでした。
ただお春が時々そっと訪ねるらしく、今もそのアパートに住んでいること、啓坊とは内々交際しているけれども先方の家へ泊り込むようなことはしないらしいと云うことを聞いて、まあまあそれならと、いくらか安心していたような訳でした。
ところが先月の末突然啓坊からお春に電話が懸り、こいさんの病気のことを知らせて来ました。