この日本館には病院とは別な玄関が設けられているのだけれども、始めて来る人はそれを知らないで、大概病院の玄関の方から案内を乞うのに、奥畑はどうして知ったのか、此方へ訪ねて来、爺やが取次に来ている間に、勝手に玄関から庭の方へ廻ったのであった。
(後で分ったことであるが、奥畑はいきなり爺やに「蒔岡妙子の病室は此方ですか」と尋ね、爺やが誰方さんですかと二度聞いたのに対して、「僕だと云って下されば分ります」とばかり答えた。
彼が如何にしてこの別館に妙子の病室があることを嗅ぎ付け、如何にして玄関から庭伝いに病室の方へ廻れることを知ったかについては、最初お春が大分疑われたのであったが、多分誰から聞いたのでもなく、自分で根気よく探索したのであるらしい。