雪子は紅茶を飲みながら新聞を読んでいたところであったが、見知らぬ男が闖入して来たので吃驚している「水戸ちゃん」を安堵させるために、さあらぬ体にもてなして、自身縁側へ出かけて行って挨拶をし、それから、沓脱石の上に立ってモジモジしているのを、座敷へ上らせないように、急いで座布団を持って来てそこの縁端に席を設けた。
そして、奥畑が何か話しかけたそうにするのを避けて次の間へ行き、お春が煮かけていた重湯の土鍋をおろして銀瓶を掛け、それが沸くのを待って茶を入れた。
彼女はそのお茶をお春に持って行かせようとしたが、愛想のよいお春が掴まると面倒であることに気付いて、「お春どん、あとはあたしがやるよって、あんたもう帰り」と云い、自分で茶を持って出て、直ぐ又次の間へ引っ込んでしまった。