あの人は何処かそう云う風なずうずうしいところのある人だから、黙っているとこれから始終やって来るようになるかも知れない、なかなか帰らないようなら、あたしが行って上げようかと云うと、でももう夕飯時であるし、今中姉ちゃんから私に電話が懸ったことも分っているから、そのうちには帰るであろう、わざわざ今から来てくれるにも及ぶまい、と云う。
幸子は、そうこうするうち夫が帰宅する時間ではあり、悦子が又、今時分から何しに行くのかとうるさく聞きたがるであろうことを顧慮して、ではまあ雪子ちゃんに任せるよって、あんじょう云うて帰って貰いなさい、と、そう云って電話を切ったものの、雪子では結局何も云い出さないでしまうことが分っているので、あれからどうなったであろうかと、一と晩じゅう気になりながら、ついそれなりに、電話を懸ける折も得られずに夜を更かしてしまったが、十一時頃に夫のあとから二階の寝室へ上ろうとすると、お春がそっと寄って来て、
「あれから一時間程してお帰りになったそうでございます」