そう聞くと幸子も、だんだん気に懸ることがあるので、帰宅してからお春を呼び入れて、あの婆やさんはあたし等をどう云う風な眼で見ていたか、何かあの婆やさんから聞いていることはないか、あるならみんな云ってほしい、と云うと、お春は眼を白黒させて、ひどく深刻そうな顔つきをして考えていたが、申しましても構いませんでございましょうか、と念を押してから、恐る恐る次のようなことを語り出した。
実はこのことは、折があったら一遍御寮人さんのお耳へ入れて置く方がよいのではないかと存じていたのでございました、と、そうお春は前置きをして云うのであったが、彼女は先月の下旬、奥畑の家に出入りしていた間にすっかりあの婆やと懇意になった。
しかし妙子があの家に病臥していた期間中は、お互にいろいろ用事が多かったので、ついぞゆっくり話し合ったことはなかったが、妙子が入院した翌日の朝、荷物がまだ少し残っていたのを取り纏めに行った時のことであった。