のみならず、百貨店、化粧品店、洋品店等の書付を見ると、妙子の買い物が大部分を占めているのであったが、お春は図らずも、去年の十二月に妙子が神戸のトーアロードのロン・シン婦人洋服店で拵えた駱駝のオーバーコートと、今年の三月頃に同じ店で拵えたヴィエラのアフタヌンドレスの勘定書があるのを見付けた。
駱駝の方は、表と裏と色の違う織り方になっている、厚くて而も大変軽い地質のもので、表は茶、裏は非常に花やかな赤であったが、当時妙子は、この外套は三百五十円かかった、仕方がないから派手で着られなくなった着物を二三枚処分して払った、と云って、得意そうに姉たちやお春に見せびらかしたものであった。
お春はその頃蘆屋の家を追い出されて自活するようになった妙子が、それにしてもそんな贅沢をしてよいのかと思ったことを今も忘れないのであるが、ほんとうは奥畑に作って貰ったのだとすれば、いかにも合点が行くのであった。