その後妙子はだんだん人形の製作から遠ざかって洋裁の方に転じ、自然収入の道が跡絶えるようになったけれども、猶且洋行の準備とか、洋裁店開業のためなどに貯蓄した金があるとのことで、生活には困らないように云っていたのであった。
幸子はそれでも、貯金をなし崩しに費消しているのでは心細いであろうと察して、小遣い取りに悦子の服を縫わせてやったり、近所の知人の家庭から洋裁の注文を貰って来てやったりしたので、今度はその方の収入があるようになり、それだけでもどうやら食べて行く分には差支えない程度になっていた。
だから幸子は、妙子の生活の内幕についてたまたま疑惑を感じることがあっても、いつもこれらの理由を思って心の中で打ち消し打ち消しして来たのであったが、………親兄弟の力も借らず、まして他人の支持などには頼らず、女の腕一つで独立独行していると云う妙子の言葉を、努めてその通りに受け取っていたのであったが、………それがやっぱり身贔屓と云うものであったのか。