妙子が入院してからと云うもの、大概毎日見舞いに行くことにしていたので、午後にでもちょっと行って見ようか、とも思ったが、何だか妙子と云うものが急に今迄とは別箇のもの、―――自分とは遠く掛け離れた、薄気味の悪い存在になったような気がして、逢いに行くのが恐いようにも感ぜられた。
と、午後の二時頃にお春が上って来て、今日は病院はどうなさいますか、只今雪子娘さんから電話で、「レベッカ」と云う小説があったら持って来てほしい、と仰っしゃっていらっしゃいますが、と云うので、あたしは今日は止めにする、あんた持って行ったげ、六畳の間の本棚にあるよってに、………と、幸子は矢張寝たままで命じた。
が、ふと思いついて、お春を呼び止めて、もうこいさんも手エ懸らんようになったことやし、雪子ちゃんに一遍骨休めに帰って来るように云いなさい、と、そう云い付けて出してやった。