と、夫はいつもの時刻に帰宅して、何と思ったか、ちょっと耳をお見せと云って、幸子をテラスの明るい所へ引っ張り出して疾患部を仔細に見、ふん、これは蚋やないで、南京虫やで、と云うのであった。
へえ、何処で南京虫にやられましたやろ、と云うと、奈良のホテルの寝台や、僕かて今朝はここが痒いと思うたら、ほら、と云って夫は二の腕をまくって見せ、これ、たしかに南京虫の痕や、お前の耳にかてこれが二箇所もあるやないか、と云うので、合せ鏡をして見ると、成る程それに紛れもなかった。
「ほんに、そうやわ。
と、夫はいつもの時刻に帰宅して、何と思ったか、ちょっと耳をお見せと云って、幸子をテラスの明るい所へ引っ張り出して疾患部を仔細に見、ふん、これは蚋やないで、南京虫やで、と云うのであった。
へえ、何処で南京虫にやられましたやろ、と云うと、奈良のホテルの寝台や、僕かて今朝はここが痒いと思うたら、ほら、と云って夫は二の腕をまくって見せ、これ、たしかに南京虫の痕や、お前の耳にかてこれが二箇所もあるやないか、と云うので、合せ鏡をして見ると、成る程それに紛れもなかった。
「ほんに、そうやわ。