………そんな夢を何度か繰り返して見ているうちに夜が明けたが、朝がた誰かが窓を開けた拍子に、石炭殻が彼女の右の眼に這入って、どうしても取り除かれず、涙が出て仕方がなかった。
九時には浜屋へ着いたけれども、貞之助は早朝から用足しに出かけたと云うことなので、昨夜の寝不足を補うために床を敷かせて横になって見たが、矢張眼瞼の中に引っかかる物があって、瞬きすると眼球が痛く、その度毎に涙が出る。
眼を洗ったり点眼水を挿したりしても良くならないので、宿の番頭に近所の眼医者へ案内して貰い、眼の中の物を除いて貰ったが、医者は今日一日だけこれを外さないようにと云って、右の眼に眼帯をさせ、明日もう一度いらっしゃいと云うのであった。