空には雲のきれぎれが絶えず流れているらしく、折々日が翳ってはぱっと照ることがあったが、そう云う時の室内の白壁の明るさは、何か頭の中までが冴え冴えと透き徹るように思えた。
それに、この間までは相当避暑客で賑わっていたのが、二十日過ぎから急に閑散になったとやらで、今は泊り客が多くはいず、広いホテルがひっそりとしていて、耳を澄ましても何の物音もしないのである。
その静かさの中にあって、その光線の、明るくなったり翳ったりが何回となく繰り返されるのを見ていると、彼女は「時間」と云うものがあることをも忘れた。