そう云えば、もう五六年も前になろうか、一度彼女は雪子が義兄の辰雄を掴まえてこんな工合に攻め立てるのを見たことがあったが、内気な人はどうかした拍子に途方もなく強くなるものであろうか、たしかその時も、日頃の因循な雪子に似合わず、理路整然と詰め寄って行き、辰雄がギュウギュウ云わされたのであった。
「成る程、啓ちゃんは働きがないかも知れんけど、その働きのない人に店の品物まで取るようなことさせといて、今になって義理がないなんて云えるやろか。
………でも、こいさん誤解せんように云うとくけど、婆やさんは何もこいさんを恨んではるのんやないねんで。