こいさんならもうすぐ参る筈ですが、只今電話を懸けて見ましょう、と、そう云って幸子が立ちかけると、いいえいいえと云いながら腰を浮かして、残念でございますけれども、何卒こいさんには宜しく仰っしゃって下さいまし、と云ってから、あの、もう神戸ではお目に懸れませんけれども、出帆迄にはまだ十日程ございますので、もし御都合がおつきになりましたら、お三人で東京まで入らしって下さいませんでしょうか、と云い出すのであった。
そして、いいえ、何もお見送り戴かなくっても宜しいのでございますけれども、実は東京で皆さんに御紹介申上げたい方があるのでございます、………と云う話なのであった。
井谷は、そこでちょっと言葉に句切りを附けてから、下のようなことを語った。