なお井谷の云うところに依ると、井谷がこの人を知ったのは、去年目白を卒業して雑誌「女性日本」の記者になった娘光代の紹介なのであるが、御牧氏は同社の社長国嶋権蔵氏に大変可愛がられているのである。
それは国嶋氏が嘗て御牧氏の設計で赤坂南町に住宅を建てたのが、非常に彼の気に入ったのが始まりで、そんな縁故から御牧氏は国嶋氏の家庭へも出入し、夫人にもひどく重宝がられるようになった。
まだ御牧氏が建築事務所を持っていた時代には、女性日本社が同じ西銀座のつい近くにあるので、殆ど毎日遊びに来、社員の総べてと馴染になってしまったのであるが、井谷の娘とは特に仲が好くて「光ちゃん光ちゃん」と呼んでいた。