それは国嶋氏が嘗て御牧氏の設計で赤坂南町に住宅を建てたのが、非常に彼の気に入ったのが始まりで、そんな縁故から御牧氏は国嶋氏の家庭へも出入し、夫人にもひどく重宝がられるようになった。
まだ御牧氏が建築事務所を持っていた時代には、女性日本社が同じ西銀座のつい近くにあるので、殆ど毎日遊びに来、社員の総べてと馴染になってしまったのであるが、井谷の娘とは特に仲が好くて「光ちゃん光ちゃん」と呼んでいた。
と云うのは、井谷の娘も亦社長夫婦に可愛がられ、家族同様にして貰っている関係もあるからなので、井谷は或る時上京のついでに、娘に案内させて社長の邸へ御機嫌伺いに出ると、そこに御牧氏が来合せていたのであったが、初対面から人を笑わせるような冗談を云う人なので、一遍で直ぐ懇意になったのであった。