井谷は、親の口から申しますのも可笑しゅうございますがと、言訳しながら語るのであるが、彼女の娘はなかなかスマートな性質であって、年に似合わず博奕の才があり、おまけに、勝気で辛抱強くて、一晩や二晩徹夜をしても昼間は平気で社へ出勤し、人一倍活躍すると云う風なので、そんなところが社長夫婦に気に入られる原因になったのであるらしい。
で、井谷は今度の準備のためにこの間から二三回上京し、国嶋氏にも旅行免状その他のことで何かと斡旋を乞うたのであるが、そう云うことから又御牧氏にも再三面接する機会があった。
而も最近国嶋邸に於いて、「御牧君に細君を持たせる話」が、当人を囲んで大いに弾んでいるところへ、毎々行き合せた。