で、井谷は今度の準備のためにこの間から二三回上京し、国嶋氏にも旅行免状その他のことで何かと斡旋を乞うたのであるが、そう云うことから又御牧氏にも再三面接する機会があった。
而も最近国嶋邸に於いて、「御牧君に細君を持たせる話」が、当人を囲んで大いに弾んでいるところへ、毎々行き合せた。
それと云うのも、国嶋氏夫妻が一番熱心な首唱者だからなのであるが、国嶋氏は御牧氏の父の子爵とも面識があるので、もし御牧氏が然るべき人と結婚する気になってくれさえすれば、自分から父子爵を説き、ここで又新たに多少のものは分けて貰い、さしあたり新夫婦が所帯を持って生計を立てて行けるように取り計らおう、と云っているのである。