と云うのであった。
ここ迄一と息にしゃべって来た井谷は、そこで又チラリと腕時計を見て、もう時間がございませんから大急ぎで申しますわ、と云いながら言葉を継いだ。
―――自分はその話を聞いた時に直ぐそう思った、これは蒔岡さんのお嬢さんに持って来いの縁であるが、残念なことには折が悪い、自分が日本にいる時でさえあったら、それには寔に良いお嬢さんがあります、私がきっとお世話致します、と、その場で請合い、早速橋渡しをするのであるが、何を云うにも洋行の期日が迫っているのでは仕様がない、と思ったので、つい口元まで出かかったのを怺えてしまったのであったが、神戸へ帰って来てからも、つくづく惜しい縁なので、何とかならないものだろうかと、そのことばかり気に懸っていた。