―――自分はその話を聞いた時に直ぐそう思った、これは蒔岡さんのお嬢さんに持って来いの縁であるが、残念なことには折が悪い、自分が日本にいる時でさえあったら、それには寔に良いお嬢さんがあります、私がきっとお世話致します、と、その場で請合い、早速橋渡しをするのであるが、何を云うにも洋行の期日が迫っているのでは仕様がない、と思ったので、つい口元まで出かかったのを怺えてしまったのであったが、神戸へ帰って来てからも、つくづく惜しい縁なので、何とかならないものだろうかと、そのことばかり気に懸っていた。
それで、御参考までに御牧氏のことをもうすこし申上げて置くが、歳は先刻も申したように四十五歳と云うのであるから、たしか此方の御主人様より一つか二つ若い筈である。
容貌は、長く西洋にいた人にあるように頭が禿げていて、色が黒く、所謂好男子ではないが、流石に育ちのよいところが窺われる立派な顔だちであるとは云える。