ただ現在は時期が悪いために生活に窮しているのであって、それは一時のことであるから決して悲観することはない。
そこで、私から父子爵に話をし、結婚の費用を持って貰うこと、新夫婦が住む家を買って貰うこと、ここ二三年間の生計を補助して貰うこと、この三つを承諾してくれるように説得しようと思うが、多分これは成功するであろう、と、そう国嶋氏は云っている。
ざっとそんなような訳で、多少御不満の点もおありになろうけれども、しかし兎も角も初婚であると云うこと、庶子ではあるが藤原氏の血を引く名門の出であり、親戚も皆知名の方々ばかりであること、扶養しなければならない係累が一人もないこと、―――申し忘れたが、氏の生母、即ち子爵の側室であった人は、氏を生んで間もなく死去したとやらで、氏は全然記憶がないそうである。