彼女も井谷の美容院の常得意ではあったけれども、井谷の店は料金が高いので、時々余所の店へ行ったこともあった。
そして雪子こそ縁談のことでたびたび厄介をかけているけれども、妙子は何もそう云う負い目を感じていないのであったが、それでも彼女は、井谷のさっぱりした、物にこだわらない気象と、任侠に富む男のような性質とに、日頃から好意以上のものを寄せていたのではあった。
彼女は殊に去年以来、蒔岡の家を勘当された形になってから、何となく世間が狭くなったように思え、心なしか今迄懇意にしていた人々が急に自分を妙な眼で見始めたような気がしてならなかったのに、井谷は終始一貫して、いつも変らぬ親身な態度で遇してくれた。